自分が書いた遺言を生前に読まれないか不安です
弁護士 浅野由花子
更新日:2026/3/16
1. はじめに
遺言を書こうと考える方の中には、「自分が生きている間に家族と揉めたくない」という理由から、亡くなるまで遺言の内容を秘密にしておきたいと考える方もいらっしゃいます。
また、誰かに書き換えられてしまわないか不安に感じたり、たとえ内容を見られるだけでも家族の不和につながるのではないかと心配される方もいます。
そこでこのページでは、遺言の種類ごとに、生前に内容を見られてしまう可能性があるのかなどを簡単に整理します。
2. 自筆証書遺言(自宅保管)の場合
自宅で保管する自筆証書遺言の場合、残念ながら、生前に内容を見られてしまう可能性や改ざんを疑われる可能性があります。
自宅で保管している以上、家族が探して見つけてしまうことや、内容を書き換えられる可能性が否定できないためです。
なお、自筆証書遺言は「遺言全文、日付、氏名を自書し押印すること」が要件であり、封をすることは法律上の要件ではありません。そのため、封をしていなかった場合や開封されてしまった場合でも、遺言としての効力は失われません。
封のされた遺言書は、相続開始後、家庭裁判所で行われる検認の場において相続人の立ち合いのもと開封することとされています(民法1004条)。もっとも、勝手に開封した場合のペナルティは5万円以下の過料にとどまります(民法1005条)。
また、遺言書は特定の受取人に宛てた手紙ではないため、信書開封罪は成立しないと考えられています。閲覧や開封だけでは通常、刑事罰にはなりません。
ただし、遺言書を偽造・変造・破棄・隠匿した場合には、有印私文書偽造罪などの犯罪や相続欠格(民法891条)が問題となる可能性があります。もっとも、閲覧や開封のみで直ちに相続欠格となることは考え難いでしょう。
3. 自筆証書遺言(法務局保管)の場合
自筆証書遺言保管制度を利用した場合、生前に相続人が遺言の内容を閲覧することはできません。遺言書の原本は法務局で保管されるため、閲覧や偽造のリスクは低いといえます。
遺言を預けると保管証が交付されます。この保管証が家族に見つかると、遺言を書いたという事実は知られる可能性がありますが、遺言書の写しは交付されないため、内容まで知られる可能性は低いといえるでしょう。
また、遺言書の保管申請や閲覧請求は遺言者本人が行う必要があります。住所変更などの届出は法定代理人でも可能ですが、閲覧申請は遺言者本人に限られています。
なお、公正証書遺言のように委任状による生前閲覧が認められているかについては公開された情報で確認できなかったため、詳しくはお近くの法務局に確認されることをお勧めします。
参考: 自筆証書遺言書保管制度(法務局)
4. 公正証書遺言
公正証書遺言の場合も、生前に相続人が遺言の内容を閲覧することはできません。原本は公証役場で保管されますから、閲覧や偽造のリスクは低いといえます。
ただし、公正証書遺言の作成時に正本や謄本が交付され、それを自宅で保管していると家族に見つかり読まれる可能性はあります。
遺言を誰にも知られたくない場合には、正本や謄本を発行しない、あるいは発行したものを破棄してしまうという方法も考えられます。遺言者本人であれば後日再発行することも可能です。
また、公正証書遺言では証人が2名必要になります。知人に依頼すると証人経由で内容が家族に知られてしまう可能性もあるため、公証役場に証人の手配を依頼することもできます。
遺言者が生存している場合、遺言の検索ができるのは原則として遺言者本人または本人から委任された代理人に限られ、それ以外の人が遺言の有無を調べることはできません(運用は公証役場によって異なる場合があります)。
なお、遺言者が認知症などで判断能力を失った場合、本人による検索はできなくなりますが、一般的には成年後見人であっても遺言検索はできないという運用がとられているようです。もっとも、任意後見契約の中で遺言検索の権限を与えていれば、任意後見人が検索できると解されています。
(民事法情報研究会より)
5. 秘密証書遺言
秘密証書遺言は内容を秘密にしたまま作成できる制度ですが、遺言書そのものは公証役場で保管されず、自分で保管することになります。また、公証人は遺言の内容を確認せず、遺言を作成した事実のみを公証役場で記録します。
そのため、自宅保管中に閲覧されたり改ざんされたりするリスクは残ります。
なお、秘密証書遺言では封印が要件とされています(民法970条)。そのため、開封をめぐって偽造や変造が争いになる可能性はありますが、開封自体のペナルティーについては自筆証書遺言の場合と変わりません。
6. まとめ
生前に遺言の内容を秘密にしておきたい場合には、自宅保管よりも、自筆証書遺言の法務局保管制度や公正証書遺言を利用する方法が安心といえるでしょう。これらの方法であれば、生前に第三者が遺言の内容を閲覧することはできず、改ざんや紛失のリスクも低くなります。
遺言を作成する際には、内容だけでなく保管方法についても検討することが大切です。
もっとも、遺言について全く知らせず、死後に初めて相続人がその内容を知る場合は、内容によっては感情的に対立し、結果的に揉めてしまうということが考えられます。
相続人間の関係悪化を防ぐことに重きを置くのであれば、相続人の意見をどれだけ考慮するかは別として、あらかじめ、遺言作成にあたり理解を得ることも検討の余地があります。
当事務所では、相続に関するご相談もお受けしております。遺言の作成にあたりお悩みの方はお気軽にご相談ください。
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