贈与をしておきましょう
生前贈与は、生きているうちに自らの意志で、相続人である配偶者や子供、もしくは、相続人以外の孫や親族などに対して、自身の財産を贈与することです。これにより、相続財産の総量を減らすことができ、生前贈与を相続税の節税対策の一つとしてお考えになる方も多いかと思います。
贈与には贈与税がかかります。どのような生前贈与を行うことが得策であるか、個別の事案に応じて検討しなければなりません。
生前贈与の活用方法には以下のようなものがあります。
1.基礎控除額110万円の範囲内で贈与をする
個人から年間110万円(基礎控除額)を超える財産をもらったときには贈与税(暦年課税方式)がかかります。年間110万円以内の贈与であれば贈与税はかかりません。
つまり、110万円以内の贈与を続ければ、財産自体が少なくなるので、相続税を少なくすることができます。ただし、贈与者が死亡した場合、死亡の3年以内に、法定相続人に贈与した財産は相続税の対象になる点に注意が必要です。
2.相続時精算課税制度を利用して贈与をする
(1)相続時精算課税の制度とは
原則として60歳以上の父母又は祖父母から、20歳以上の推定相続人である子又は孫に対し、財産を贈与した場合において選択できる贈与税の制度です。
この制度を選択する場合には、贈与を受けた年の翌年の2月1日から3月15日の間に一定の書類を添付した贈与税の申告書を提出する必要があります。
(2)贈与税額の計算方法
贈与税の額は、贈与財産の価額の合計額から、複数年にわたり利用できる特別控除額(限度額:2,500万円。ただし、前年以前において、既にこの特別控除額を控除している場合は、残額が限度額となります。)を控除した後の金額に、一律20%の税率を乗じて算出します。
なお、この制度を選択すると、その選択に係る贈与者から贈与を受ける財産については、その選択をした年分以降全てこの制度が適用され、「暦年課税(上記1の場合)」へ変更することはできません。
(3)相続税額の計算方法
この制度の贈与者である父母又は祖父母が亡くなった時の相続税の計算上、相続財産の価額にこの制度を適用した贈与財産の価額(贈与時の時価)を加算して相続税額を計算します。その額から、既に納めた相続時精算課税に係る贈与税相当額を控除して相続税額を算出します。
このように、相続時精算課税の制度は、贈与税・相続税を通じた課税が行われる制度です。
3.婚姻期間20年以上の夫から妻へ居住用不動産を贈与する
(1)夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除とは
婚姻期間が20年以上の夫婦の間で、居住用不動産又は居住用不動産を取得するための金銭の贈与が行われた場合、基礎控除110万円のほかに最高2,000万円まで控除(配偶者控除)できます。
(2)特例を受けるための適用要件
- 夫婦の婚姻期間が20年を過ぎた後に贈与が行われたこと
- 配偶者から贈与された財産が、自分が住むための国内の居住用不動産であること又は居住用不動産を取得するための金銭であること
- 贈与を受けた年の翌年3月15日までに、贈与により取得した国内の居住用不動産又は贈与を受けた金銭で取得した国内の居住用不動産に、贈与を受けた者が現実に住んでおり、その後も引き続き住む見込みであること