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被相続人の借金を返済してしまったが、相続放棄できる?医療費は?

弁護士 浅野由花子

被相続人の借金と相続放棄のイメージ

1 はじめに

被相続人の債権者が、相続人が相続放棄を迷っている間に取り立てに来ることもあり得ないわけではありません。

そして、単純承認をした場合は相続放棄できなくなるところ、債権者に返済を求められ被相続人の借金を返してしまった場合、単純承認したことになってしまうのでしょうか。

2 単純承認とは

以下の場合は単純承認をしたものとみなされ、無限に被相続人の権利義務を承継するとされています。

そして、921条1号の趣旨は、単純承認の意思がない限りとらない行為であり、第三者から見て単純承認があったと信じて当然であるから、単純承認とみなすものであるとされています。

〈民法921条〉

  • ・1号:相続財産の全部、または一部を処分した場合(ただし、保存行為および短期賃貸借を除く)
  • ・2号:申述期間内に限定承認・相続放棄をしなかった場合
  • ・3号:相続放棄または限定承認をした後であっても、相続財産の全部、または一部を隠したり、消費したり、わざと財産目録に記載しなかった場合

単純承認をめぐっては、葬儀費用を遺産から支払ってしまったが相続放棄できるかといったご質問を受けることもあり、 こちらのページでも紹介しております。

3 借金を返してしまった!

まず、遺産ではなく自分個人の財産から被相続人の債務を返済してしまった場合は、どうなるのでしょうか。

この点については、個人の財産から相続債務を弁済した場合には、相続財産を処分したものとはいえず、単純承認には当たらないとの判断があります。(福岡高裁宮崎支部平成10年12月22日決定)。

個人財産の処分にすぎないこと、第三者による弁済(民法474条)が認められている点でも単純承認の意思がなければしない行為とは言えないことから、921条1号には当たらないという結論となると考えられます。

一方で相続財産から、借金などの相続債務を返済した場合は、いろいろな考え方がありますが、基本的には相続放棄できなくなると考えられています。

そもそも、相続放棄する場合は被相続人の借金などの債務の返済義務がなくなりますから、相続放棄するか迷っている場合には、相続債務の返済を求められても、相続財産の調査が終わるまで、その返済については慎重となるべきでしょう。

しかし、相続放棄はするが、自分自身も交流がある知人・親族が相手のため、今後の関係を考えてその人にだけでも被相続人の借金を払いたいという場合もあるかもしれません。

その場合は、自分の預金口座から相手口座に振り込むなどしてポケットマネーらの支出であることを明らかにできるようにするべきでしょう。

4 被相続人の医療費を支払ってしまった!

被相続人の生前の医療費についても、病院に対して被相続人が負う債務であって、相続債務に当たります。

それでは、被相続人の医療費を支払ってしまうと相続放棄できなくなってしまうのでしょうか。

この点、治療費については、社会通念に照らすと、葬儀費用と同じく、単純承認とは無関係に、遺族として当然に行うべき支払いであるという側面があります。

そのため、単純承認の意思がなければ行わない行為であり、第三者から見て単純承認したと信じて当然といえるようなものであるかは、個別具体的な事情によって異なることになるでしょう。

例えば、少額の医療費を相続財産から支出したケースで、遺族として当然なすべき支払にあたり、人倫と道義上必然の行為である点で、公平ないし信義則上やむを得ない事情に由来するとして単純承認に当たらないとした判断もあります。(大阪高裁昭和54年3月22日)

ただし、治療費が高額であるなど社会的に見て不相当な額である場合には許容されない可能性もあるため、相続放棄をお考えになっている方は、治療費の支払であっても、相続財産からこれを支出することについては慎重となるべきでしょう。

なお、上述のとおり、相続放棄をすると、相続開始時にさかのぼって相続人でなくなるため第三者による債務弁済(民法474条)となり、基本的には債権者に代位することとなります(民法499条)。そのため、他の相続人に対し自分に支払うよう求めることも考えられます。

5 終わりに

どのような行為をすれば単純承認をしたとみなされるかについては、大変皆さん迷われるところです。

相続放棄については、基本的には、相続財産を調査し、債務が資産を超過するかを明らかにしたうえで検討することとなります。そのため、相続財産の調査が終わらないうちに、安易に財産から費用を支出したり、処分したりという行為に及ぶことは避けるべきでしょう。

なお、借入先が多く、資産が分散しているなどして、相続財産の調査が終わらないため、相続放棄の判断ができない場合には、相続放棄の熟慮期間の伸長を申立てることも検討することとなります。

相続放棄を含め、相続に関するお悩みがございましたら、お気軽に当事務所にご相談ください。

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