養子縁組をしたが、養子の子どもは相続権があるの?
弁護士 浅野由花子
更新日:2026/7/1
1. はじめに
「養子縁組をしたけれど、その養子にはすでに子どもがいる。この子どもまで自分の財産を相続することになるのでしょうか。」
「養子縁組より前に生まれた子どもは、養親とは血縁関係がないのだから、相続とは無関係ですよね。」と誤解される方がいます。
確かに、養子縁組前に生まれた養子の子どもは、基本的に養親との間に法定の親族関係は生じません。
しかし、それだけを理由に「絶対に養親の財産を受け取ることはない」と考えるのは誤りです。
実際には、養親と養子のどちらが先に亡くなるかによって結論が変わります。
今回は、養子縁組前に生まれた養子の子どもに相続権が認められる場合について確認していきます。
2. 養子縁組によって生じる親族関係
養子縁組が成立すると、養子は縁組の日から養親の嫡出子となります(民法809条)。
また、養親と養子との間には法律上の血族関係(法定血族)が成立し、養親の親族との間にも親族関係が生じます(民法727条)。
もっとも、この親族関係には以下の特徴があります。
(1)養子縁組には遡及効がない
養子縁組の効力は縁組の日から生じます。
つまり、養子縁組によって過去にさかのぼって親族関係が成立するわけではありません。
(2)養子の子どもまで当然に親族になるわけではない
養子縁組は、養子本人を養親の家族として取り込む制度です。
そのため、養子縁組前から存在していた養子の子どもと養親との間には、原則として法律上の血族関係は生じません。
これらの特徴のため、「縁組前の養子の子とは血族関係がないのだから、その子どもは養親の財産を相続できないのでは?」と思われるかもしれません。
しかし、相続では必ずしもそのような結論にはなりません。
3. 死亡する順番によって結論が変わる
(1)養親が養子より先に死亡した場合
まず、養親が養子より先に亡くなった場合です。
養子は円ふみの日から、養親の嫡出子としての身分を有することになるため、第1順位の相続人として養親の財産を相続します(民法809条、887条1項)。
その後、養子が亡くなれば、その相続財産には養親から受け継いだ財産も含まれます。
そして、その養子の相続人となるのは養子の子どもです。
この場合、その子どもが養子縁組前に生まれていたか後に生まれていたかは関係ありません。
つまり、養親 → 養子 → 養子の子という順番で相続が発生するため、養子の子どもは養子の相続を通じて間接的に養親の財産を受け継ぐことになります。
(2)養子が養親より先に死亡した場合(代襲相続)
一方で、養子が養親より先に亡くなった場合はどうでしょうか。
この場合には、「代襲相続」が問題になります。
代襲相続とは、本来相続人となるはずだった子が先に死亡している場合に、その子どもが代わって相続する制度です(民法887条2項)。
もっとも、民法887条2項ただし書は、「被相続人の直系卑属でない者」は代襲相続人になれないと定めています。
養子縁組前に生まれた養子の子どもは、養親との間に法定血族関係がありません。
そのため、養親の「直系卑属」には当たらず、原則として代襲相続人にはなれません。
一方、養子縁組後に生まれた子どもは、養親との関係では法律上の孫(直系卑属)となります。
そのため、養子が先に亡くなっていても、代襲相続人として養親の財産を相続できます。
もっとも、養子縁組前に生まれた子どもであっても、別の理由で養親と自然血族関係がある場合には結論が異なります。
例えば、養親の実娘と養子(婿養子)との間に生まれた子どもであれば、その子どもは養親の実の孫でもあります。
このような場合には、養親の直系卑属として代襲相続が認められることがあります(大阪高判平成元年8月10日)。
4. まとめ
養子縁組前に生まれた養子の子どもについては、「養親と血族関係がない」という点だけで相続権の有無を判断することはできません。
結論は、誰が先に亡くなるかによって異なります。
養親が先に死亡した場合は、養子が相続した財産をその後に養子の子どもが相続するため、結果として養親の財産を受け継ぐことになります。
養子が先に死亡した場合は、養子縁組前に生まれた子どもは養親の直系卑属ではないため、原則として代襲相続人にはなれません。
もっとも、養親との間に別途自然血族関係があるなど特別な事情がある場合には、例外的に代襲相続が認められる可能性があります。
養子縁組は相続対策として利用されることも多い制度ですが、養子に子どもがいる場合には、養親と養子が死亡する順番によって最終的な財産の帰属が大きく変わることがあります。
養子縁組をご検討中の方や、既に養子縁組をされている方は、ご自身の家族構成や想定される相続の流れを踏まえ、どのような場合に誰が相続人となるのかをあらかじめ確認しておくことをおすすめします。
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