遺言書作成例14:財産を寄付したい!~財産を日本赤十字社に寄付する場合~
遺言書
遺言者○○○○は、この遺言書により次のとおり遺言する。
1 遺言者は、現金5000万円を日本赤十字社に遺贈する。
2 付言
私は、私の故郷である愛知県において今後起こりうる災害への備えを始め、苦しむ人を救うための活動を支援するために、遺産のうち遺留分を侵害しない範囲である5000万円を日本赤十字社に寄付し、私の思いを形にしていただきたいと思いました。
平成○年○月○日
○○県○○市○○町○丁目○番地
遺言者 ○○○○ 印
日本赤十字社愛知県支部への遺贈について、詳しくはこちらをご覧ください
遺産を自分が生前興味のある社会事業や、社会福祉のために寄付したいという方がいらっしゃいます。
その他、自分の出身大学の研究に役立てるために出身大学に寄付をする方や、地方公共団体に寄付する方もいます。
相続人がいない人の他、相続人にすべての財産を寄付することをよしとしない方なども遺産を寄付することがあります。
このように国や、地方公共団体又は特定の公益を目的とする事業を行う特定の法人などに寄付した場合や特定の公益信託の信託財産とするために支出した場合は、その寄付をした財産や支出した金銭は相続税の対象としない特例があります。*1
遺産を寄付する場合には遺贈という方法をとることになります。遺贈とは、遺言によって財産を無償で処分することです(民法964条)。遺贈は、遺言者が死亡すればその効力を生じることになります。遺贈は死因贈与と異なり契約ではなく単独行為であり、遺言者の意思のみですることができます。
遺贈の目的物としては不動産などでもよいのですが、寄付する団体によっては金銭のみを受け付ける団体もあるので注意が必要です。
また、その団体が複数の事業を行っている場合などは、寄付金の使途を指定することも可能です。本件の遺言の文例でも使途が指定されています。
また、遺産を寄付する際に注意が必要なのが、相続人の遺留分を侵害しないようにすることです。
法定相続人のうち兄弟姉妹以外には遺留分というものがあります。これは、その相続人のために残さなければならないと決められた財産の割合のことを言います。
つまり、被相続人が全額を寄付したいと思っていたとしても、遺留分を有する相続人が遺留分減殺請求をすることが考えられます。そうすると、相続人間あるいは相続人と寄付の相手先の団体の間にトラブルが生じる可能性もあります。
そのような事態になればせっかくの遺言者の善意がトラブルを招くという不幸な結果になってしまうので必ず遺留分には留意するようにしてください。
本件で例に挙げた日本赤十字社をはじめ、大きな団体はそのホームページで、遺贈する場合の方法や留意点を紹介しているのでまずはそれらを一読してみましょう。
- 遺言書作成例1:妻に全財産を残したい!~すべての財産を妻に相続させる遺言書~
- 遺言書作成例2:妻と子供に特定の財産を残したい!~特定の財産を妻と子供に相続させる遺言書~
- 遺言書作成例3:妻と子供に法定相続分と異なる割合で財産を残したい!~相続分を指定する遺言書~
- 遺言書作成例4:内縁の妻に全財産を残したい!~すべての財産を相続人でない人に遺贈する遺言書~
- 遺言書作成例5:甥と姪に特定の財産を残したい!~特定の財産を相続人でない人に遺贈する遺言書~
- 遺言書作成例6:子供を認知し財産を残したい!~遺言執行者を指定して遺言による認知をする場合~
- 遺言書作成例7:遺言執行者を指定しておきたい!~弁護士法人を遺言執行者に指定する遺言書~
- 遺言書作成例8:祭祀承継者を指定しておきたい!~長男を祭祀承継者に指定する遺言書~
- 遺言書作成例9:相続人が遺言者より先に亡くなってしまうかもしれない!~予備的遺言を入れる場合~
- 遺言書作成例10:妻の老後が心配で、誰かに妻の面倒をみてもらいたい!~甥に不動産を遺贈する代わりに、妻の生存中は生活費を支払ってもらう負担付遺贈の遺言書~
- 遺言書作成例11:長女に結婚資金の贈与をしているが、相続分の算定の際に入れたくない!~特別受益の持戻し免除をする場合~
- 遺言書作成例12:財産を与えたくない相続人がいる!~相続人を廃除する遺言書~
- 遺言書作成例13:昔作った遺言書をなかったことにしたい!~以前の遺言を撤回する場合~
- 遺言書作成例14:財産を寄付したい!~財産を日本赤十字社に寄付する場合~
- 遺言書作成例15:遺言の内容について、自分の気持ちを残したい!~付言を入れる場合~