遺言書作成例12:財産を与えたくない相続人がいる!~相続人を廃除する遺言書~
遺言書
遺言者○○○○は、この遺言書により次のとおり遺言する。
1 遺言者○○○○の長男○○○○(昭和○年○月○日生)は、遺言者やその兄弟をたびたび大声で「役立たず」「馬鹿」「死ね」などとののしり、殴る、蹴る、物を投げるなどの暴行を加え、遺言者や兄弟たちに創傷を与えた。これらの虐待および重大な侮辱行為を行った長男○○を遺言者の推定相続人から廃除する。
2 この遺言の遺言執行者を友人の○○○○(○○県○○市○○町○丁目○番○号)に指定する。
平成○年○月○日
○○県○○市○○町○丁目○番地
遺言者 ○○○○ 印
相続人の廃除とは
相続人の廃除とは、被相続人の意思に基づいて、遺留分権を有する推定相続人の相続人の相続権を剥奪する制度のことをいいます。
廃除には生前にする生前廃除と、遺言をもってする遺言廃除があります。
本事例では遺言廃除がされています。遺言廃除は、被相続人が遺言で廃除の意思を表明した場合に、その遺言が効力を生じたあとに遺言執行者が請求することによって、家庭裁判所がその推定相続人の相続権をはく奪することをいいます(民法892条)。遺言にはっきりと「廃除する」と書かれていなくても、遺言作成の経過などから客観的に特定の推定相続人を廃除する意思が認められる場合には廃除が認められることも裁判例ではあるようです。しかし、廃除することを決めている場合は明示するのが無難でしょう。
廃除をする対象となるのは、遺留分を有する相続人ですから、兄弟姉妹を廃除することはできません。また遺留分を放棄している者も廃除できません。兄弟姉妹に財産を残したくない場合はその旨の遺言書を書くことになります。
なお、相続人を廃除すると、代襲相続が生じます。つまり、たとえば被相続人が、非行のあった子を廃除した場合には、廃除された子の子、つまり被相続にとっては孫が被相続人を相続することになるのです。
廃除が家庭裁判所によって認められるためには、被相続人に対して虐待・侮辱を行った者や、重大な犯罪を犯したり、家庭を一切顧慮せずに過ごしてきたなど、著しい非行のある者であることが必要です(民法892条)。
本件の遺言書では、遺言執行人が家庭裁判所に請求する際に廃除原因を示せるように、具体的にどのような廃除原因となる行為があったかを明らかにしています。
遺言執行者は、推定相続人廃除の申立を家庭裁判所に行い、家庭裁判所によって廃除原因が認められ排除の審判が出されれば、10日以内に推定相続人廃除届を役所へ提出しなければなりません。
なお、被相続人は、生前廃除をしていても、いつでもこれを取り消すことができます。遺言で取り消すこともできます(民法894条2項、893条)。遺言で廃除を取消した場合には、遺言者が死亡したときに廃除取消しの効果が生じます。この場合は、遺言執行者は、遅滞なく排除の取消しの請求をします。
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