遺言書作成例2:妻と子供に特定の財産を残したい!~特定の財産を妻と子供に相続させる遺言書~
遺言書
遺言者○○○○は、この遺言書で次のとおり遺産分割の方法を指定する。
1 妻 ○○○○(昭和○年○月○日生)は、次の財産を取得する。
(1)○○県○○市○○町○番
宅地 ○○・○○平方メートル
(2)○○銀行○○支店の遺言者名義の定期預金全部
口座番号 ○○○○○○○
2 長女 ○○○○(昭和○年○月○日生)および次女 ○○○○(昭和○年○月○日生)は、その余の財産を平等の割合をもって取得する。
平成○年○月○日
○○県○○市○○町○番地
遺言者 ○○○○ 印
法定相続分
法定相続人とは、民法で決められた相続人となる人です。
法定相続分とは民法が規定する法定相続人が譲り受けることのできる遺産の割合をいいます。
配偶者と直系卑属が相続人の場合の法定相続分はそれぞれ2分の1ずつ、配偶者と直系尊属が相続人の場合は配偶者が3分の2・直系尊属が3分の1、配偶者と兄弟姉妹が相続人の場合は配偶者が4分の3・兄弟姉妹が4分の1となります。
本件の遺言は相続人が妻と長女、次女であることを想定しています。この場合は妻の相続分は2分の1、長女と次女の相続分は2分の1を頭数の2で割った4分の1ずつとなります。
遺産分割方法の指定
しかし、このような法定相続分に関わらず、特定の財産を特定の相続人に取得させることができます。
これが遺産分割方法の指定です。民法は、被相続人は遺言で遺産分割の方法を指定したり、指定することを第三者に委託することができるとします(民法908条)。
逆に遺言以外で遺産分割の方法を指定することはできません。遺産分割の方法には現物分割の他に換価分割などの方法もあります。
遺産分割の方法を定める遺言は、遺言者の死亡によりそのときから効果を生じます。当該遺言において相続による承継を当該相続人の意思表示にかからせたなどの特段の事情のない限り何らの行為を要せずして、当該遺産は、被相続人の死亡のときから直ちに当該相続人に相続により承継されることになるのです(最判平成3年4月19日)。
また、遺産分割方法の指定により相続した財産は登記なくして、第三者にその権利を主張することができます(最判平14年6月10日)。
本件のような遺言は遺産の全部を、相続人全員について遺産分割の方法を指定する遺言となります。
不動産などの分割することが困難な財産が遺産の中に存在する場合について被相続人が、あらかじめ分割方法を指定することにより、その意思を相続人に示すことができることになります。
「相続させる旨の遺言」は遺産分割方法の指定と解釈される判例
「相続させる」旨を書いた遺言書は、特段の事情がない限り、遺産分割方法を定めた遺言であり、相続開始と同時に、特定の財産の所有権が特定の相続人に移転する効果が生じるとされます(最判平成3年4月19日)。
つまり、本件の遺言状が、「妻 ○○○○(昭和○年○月○日生)に、次の財産を相続させる。」と書かれていても、同様の効果を生じさせることになるのです。
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