家族の状況が変化し、遺言書を書き直した事例
概要
Aさんは、自筆証書遺言の形式で遺言書を5年前に作成しました。その後家族の状況が変化したので、内容を見直そうと考えていました。遺言書を書き直すことはできるのでしょうか?
解決への法的判断
答えは民法第1022条にあります。「遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って、その遺言の全部又は一部を撤回することができる。」と定められており、書き直すことは可能です。
具体的には、遺言書の撤回は、前の遺言の一部または全部を撤回するという遺言書を作成して撤回をします。
撤回する遺言書が自筆証書遺言書でも、撤回の記載をする遺言書が自筆証書遺言書でも公正証書遺言書でも秘密証書遺言書でも民法上の遺言書の方式であれば構いません。
ただし、公正証書遺言書を自筆証書遺言書で撤回しても、書き換えた自筆証書遺言書を発見されなかったり、形式に不備があり効力が発生しないことがあるので、公正証書遺言書を書き換えるなら公正証書遺言書が無難です。
なお、一部撤回として「遺言中○を、□に変更する」とすることもできます。ただし、一部撤回は紛らわしく解釈に争いが生じうるので、全部を撤回して、新たに作成し直した方が無難です。
撤回する時期は、遺言する人の生前であり、判断能力があればいつでも、何度でも構いません。また、遺言によって撤回しなくても前の遺言が後の遺言と抵触するときはその抵触する部分は後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなされます(民法第1023条)。
そして、公正証書遺言書ではできませんが、自筆証書遺言書は遺言書原本を破棄することで、遺言書を撤回したことになります。また、遺言書で、相続、遺贈の目的物を故意に破棄、処分した場合も、撤回したことになります。
解決内容
Aさんは、長女に全てを相続させるつもりでしたが、長女夫婦で海外に行ってしまったので、前の遺言を撤回し、同居する次女に全てを相続させる内容の自筆証書遺言書を作成しました。