貸金庫契約とその内容物の相続
貸金庫契約とその内容物の相続
Aさんはご主人がなくなり、相続手続きについて相談にきました。相続財産調査をしていると、金融機関で貸金庫を借りていましたが、Aさんは何も知りませんでした。
貸金庫はどうしたらよいでしょうか。
貸金庫に関する相続
相続が開始して、亡くなった人(被相続人)の所有していた財産や債務などは全て相続の対象となり、原則として相続人に承継されます(民法第896条)。貸金庫契約の契約上の地位とその内容物も承継することになります。
遺言によって貸金庫契約とその内容物を誰が相続するのか決められている場合は、その者が承継しますが、遺言がない場合は遺産分割協議が終わるまでは相続人全員が相続財産を共有(民法第898条)し、遺産分割協議後は相続人全員で合意し、相続財産を承継すると決められた者が承継します。
貸金庫契約は、契約名義変更をして遺言や遺産分割協議により承継すると決められた者が被相続人に引き続き契約しつづけることが可能ですが、特に相続人が複数いる場合は複雑になるので、一旦解約して新たに貸金庫契約をするように金融機関から勧められます。
契約者の死亡後に開扉できるのは
契約者の生前、貸金庫を開けられるのは、原則として契約者本人です。契約で代理人を定めれば、代理人も貸金庫を開けることは出来ます。
ただし、契約者の死亡後は代理人でも開けることは出来ません。契約者が死亡した場合、貸金庫の中に入っている財産は遺言がなければ、遺産分割協議が済むまでは相続人の共有となります。
共有は、本来自己の持分により自由に使用が出来ますが、各相続人が貸金庫を開けられるということにしてしまうと、相続人の一人が貸金庫を開けて内容物を持っていってしまうことが可能になってしまいます。
よって金融機関が契約者の死亡を知った時点で預金口座と共に取引凍結され、貸金庫を開けることができないことになります。なぜなら金融機関は、一部の相続人の請求によって貸金庫を開けて後々他の相続人に責任追及されるリスク回避しようとしているからです。
契約者が死亡した場合に貸金庫を開けるには、原則相続人全員の立会が必要です。内容物は金融機関も把握していないので、開扉後に内容物の存否が争いになるリスクがあるからです。
または相続人全員の委任状を提出して、相続人の一人を代表者として開扉することもあります。しかし内容物の確認には慎重さが求められるため、金融機関によっては、代表者のみの開扉を認めずに公証人の立会を求めることがあります。
ただし遺言があり遺言により遺言執行者が選任されており、貸金庫の開扉の権限が遺言書で明確に与えられていればその遺言執行者により単独で貸金庫の開扉をすることは可能です。
開扉に期限はありませんが、貸金庫の契約をしている金融機関の支店窓口で手続きをする必要があります。
なお、金融機関が死亡を知る前であれば、代理人である相続人が貸金庫を開けること自体は可能ですが、上記のとおり、貸金庫の内容物について相続人間で争いになり得ますし、税務署にも余計な疑念を持たれかねませんので相続人の一人による開扉は避けるべきです。
最後に
Aさんは他の相続人であるお子さんとともに貸金庫開扉手続きを無事行いました。